大人ニキビ研究

ニキビを防ぐ
「ふきとりケア」の力

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の効果を保証するものではありません。本研究成果は限られた条件での成果です。

1. 研究ダイジェスト

  • 日々の洗顔だけでは、肌表面や肌内部のアクネ菌を落としきれないことを発見しました。
  • 洗顔のみの場合と比べて、ふきとり化粧水を使用することで、アクネ菌の量を約50%減少させることを示しました。
  • 「ふきとりケア」を継続することで、ニキビ・肌あれの予防・改善ができることを確認しました。

(図1,2参照)

図1:ふきとりケアによるニキビ・肌あれの改善メカニズム
図2:通常のスキンケアとふきとりケアの4週間後の肌状態の比較
試験方法:20代~30代の健常な女性4名の左右の頬のうち、片側はふきとり化粧水のみを塗布、反対側はふきとり化粧水を含ませたコットンで肌をふき取るお手入れを加えて、1日2回、4週間の連用試験を実施した。本試験はヘルシンキ宣言*1に基づく倫理的原則に従って実施した。※図2の画像は著効例

2. 研究の背景

 20代、30代の女性の多くは、くり返しできるニキビに悩んでいます。当社が以前行った調査によると、ニキビができやすいと感じている女性の肌には、ニキビの原因菌であるアクネ菌が一定以上の割合で含まれていました(図3)。
 しかしながら、皮膚常在菌として含まれているアクネ菌は日々の洗顔だけでは落としきれないと考えられています。本研究では、アクネ菌を物理的に除去する「ふきとりケア」というスキンケア方法に着目し、その有効性を評価しました。

ニキビがくり返しできる肌はアクネ菌が多い

ニキビができやすいと感じている女性ならびに、ニキビができにくい女性の頬の皮膚常在菌を測定しました。ニキビができやすいと感じている女性(ニキビ肌)からは、一定以上の割合でアクネ菌が検出されるのに対して、たまにニキビができる女性(軽度ニキビ肌)から検出されるアクネ菌の割合は低く、まったくニキビができない女性(健常肌)からは、アクネ菌は検出されませんでした(図3)。

図3:ニキビのできやすさと皮膚常在菌叢
試験方法:ニキビができやすいと感じている女性(ニキビ肌)4名、たまにニキビができると感じている女性(軽度ニキビ肌)1名、ニキビができない女性(健常肌)1名を被験者とした。顔面頬より綿棒にて皮膚表面を拭き取り、DNA抽出後に次世代シーケンサーにて菌叢解析を行った。本試験はヘルシンキ宣言*1に基づく倫理的原則に従って実施した。

3. 洗顔後の肌表面や角層の内部にはアクネ菌が潜んでいることを発見

概要

 ニキビ患者の方の肌上にはニキビの原因菌であるアクネ菌がとどまり続けており、それらは日々の洗顔では除去しきれないと考えられています。ニキビ予防のための洗顔料には殺菌成分などが含まれているにもかかわらず、洗顔しても肌にアクネ菌が残存し続けるのはなぜなのか、その原因は肌内部にあるのではないかと考え、はじめに、角層中の皮膚常在菌に着目した検討を行いました。

結果

 ニキビのある女性の肌を洗顔した後、テープストリッピング法にて角層を採取しました。角層を含むテープを電子顕微鏡にて観察したところ、採取したテープの1枚目から5枚目に付着している角層において皮膚常在菌が観察できました(図4)。つまり、洗顔だけでは、肌表面や角層の内部に潜む菌を完全に除去できていないことが分かりました。


図4.剥離した1層目ならびに5層目の角層の走査型電子顕微鏡観察画像
試験方法)20代、30代の、ニキビのある女性3名とニキビのない女性2名を被験者とした。テープストリッピング法で洗顔後にフェイスラインの同一部位から5回角層を採取した後、角層が付着したテープをグルタルアルデヒドで固定し、乾燥後オスミウムをコーティングした。テープに付着した角層は走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM-7001F)で観察した。本試験はヘルシンキ宣言*1に基づく倫理的原則に従って実施した。

 さらに、ニキビができやすい女性の角層を採取したテープから皮膚常在菌を抽出し、菌叢解析を行いました。その結果を図5に示します。テープ1枚目、3枚目、5枚目のいずれからも多数の菌種が検出され、特にアクネ菌が多く検出されていました。


図5.剥離した角層の菌叢解析結果
試験方法:ニキビのある女性を被験者とし、テープストリッピング法で洗顔後にフェイスラインの同一部位から5回角層を採取した後、剥離したテープからDNAを抽出し、次世代シーケンスを用いて皮膚常在菌叢を解析した(n=1)。本試験はヘルシンキ宣言*1に基づく倫理的原則に従って実施した。

考察

 洗顔後の肌表面および内部には、アクネ菌を含む皮膚常在菌が含まれていることがわかりました。洗顔は肌あれの原因となる肌表面の汗、皮脂、古い角質や花粉などの汚れを落とし、肌を清浄に保つための、大切なお手入れです。しかしながら、洗顔後にも肌上に菌が残っているという結果も得られています。洗顔だけでは肌内部にいる置き去りアクネ菌を完全に除去できておらず、ニキビ対策として不十分だと考えられますので、殺菌成分や抗炎症成分を含むスキンケアを日々使用しましょう。

発表先

1)日本薬学会第139年会:ポスター発表
2)第31回 国際化粧品技術者会連盟本大会 2020(IFSCC Yokohama Congress 2020):口頭発表
3)日本防菌防黴学会第49回年次大会:口頭発表

4. ふきとりケアによって、角層中の置き去りアクネ菌を除去できることを発見

概要

 上記の検討において、洗顔だけではニキビの原因菌であるアクネ菌を完全に除去できず、肌内部にもとどまり続けていることを示しました。そこで、物理的に古い角質や汚れを落とす「ふきとりケア」に着目し、その効果を検証しました。

結果

 ニキビのある女性の肌を、ふきとり化粧水を含侵させたコットンでふきとった後、コットンに付着した皮膚常在菌を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察しました。その結果、ふきとり後のコットンに、皮膚常在菌が付着していることが確認できました(図6)。


図6.ふきとりケア後のコットン表面の走査型電子顕微鏡観察画像
試験方法:ふきとり化粧水を適量含ませた化粧用コットンで、洗顔後の肌を3回ふきとった。そのコットンを臨界点乾燥処理し、走査電子顕微鏡(SEM)にて観察した。

 そこで、ふきとったコットンに付着している皮膚常在菌の解析を行いました。結果を図7に示します。スワブ法(綿棒)で採取した肌表面の菌と同様に、コットンからもアクネ菌をはじめとする皮膚常在菌が検出されていたことから、ふきとりケアによってアクネ菌が取り除けることが確かめられました。


図7.ふきとりケア後のコットンに付着した皮膚常在菌叢解析結果
試験方法:ニキビのある20代女性5名を被験者とし、洗顔後の肌と、洗顔後にふきとり化粧水を浸み込ませたコットンでふきとった肌の後の菌除去効果などを解析した。また、ふきとったコットンに付着した常在菌と綿棒により皮膚の菌を採取するスワブ法で採取した常在菌を次世代シーケンサーで菌叢解析して比較しました。本試験はヘルシンキ宣言*1に基づく倫理的原則に従って実施した。

 さらに、洗顔のみの場合と、洗顔後にふきとり化粧水を含ませたコットンで1度ふきとった場合の肌の菌数を測定しました。その結果、ふきとりケアを行うことによって、洗顔後に残ったアクネ菌をはじめとする肌表面の菌の量を50%以上減らすことができることが明らかになりました(図8)。


図8.洗顔後ならびにその後のふきとりケア後の皮膚常在菌数
試験方法:ニキビのある女性6名を被験者とした。ふきとり化粧水を浸み込ませたコットンでふきとる前と後の肌から、スワブ法で常在菌を採取し、常在菌数とアクネ菌数をリアルタイムPCR法にて解析した。本試験はヘルシンキ宣言*1に基づく倫理的原則に従って実施した。平均値±SEM, *:P<0.05, **:P<0.01(Dunnettの検定)

考察

 洗顔のみでは落としきれない肌表面や内部のアクネ菌をふきとりケアによって除去できることを示しました。ふきとり化粧水を染み込ませたコットンでふきとるという行為によって、古い角質とともに肌表面や内部のアクネ菌を物理的に取り除くことができるため、ふきとりケアはニキビの予防および改善の面で効果的であると考えられます。

発表先

1)日本薬学会第139年会:ポスター発表
2)第31回 国際化粧品技術者会連盟本大会 2020(IFSCC Yokohama Congress 2020):口頭発表
3)日本防菌防黴学会第49回年次大会:口頭発表

5. くり返すニキビは、ふきとりケアによって改善することを確認

概要

 上記の検討によって、日々の洗顔で落としきれないアクネ菌がふきとりケアによって除去できるということを示しました。そこで、ニキビや肌あれを有した20~40代の女性を対象とした連用試験を実施し、ふきとりケアをつづけた場合の肌状態の変化を観察するとともに、ふきとりケアによるニキビ予防効果を検証しました。

結果①

 殺菌成分・抗炎症成分を配合したふきとり化粧水を含ませたコットンによるふきとりケアを4週間継続することで、ニキビ個数が減少しました(図9)。


図9.ふきとりケア継続によるニキビの改善効果
試験方法:医師の診断により、ニキビ症状および肌あれ症状を有する20~49歳の健常な日本人女性11名を被験者とし、4週間、朝晩2回、洗顔後に殺菌成分・抗炎症成分を配合したふきとり化粧水を含ませた化粧用コットンによるふきとりケアを実施した。使用前、2週間後、4週間後に、医師によるニキビ個数の判定を行った。平均値±SEM, *:P<0.05(Dunnettの検定)

結果②

 殺菌成分・抗炎症成分を配合したふきとり化粧水を含ませたコットンによるふきとりケアを4週間継続することで、肌表面の角層細胞の重層剥離率が有意に減少していました(図10)。角層の細胞は表皮のターンオーバーが乱れると重なって剥がれやすくなることから、重層剥離率はバリア機能低下や肌あれの指標とされています。そのため、角層の重層剥離率が減少すると、肌のバリア機能が正常化していると考えられます。


図10.ふきとりケア継続後の角層細胞形態変化
試験方法:医師の診断により、ニキビ症状および肌あれ症状を有する20~49歳の健常な日本人女性11名を被験者とし、4週間、朝晩2回、洗顔後に殺菌成分・抗炎症成分を配合したふきとり化粧水を含ませた化粧用コットンによるふきとりケアを実施した。使用前、2週間後、4週間後に、採取した角層の重層剥離率*2の測定を行った。平均値±SEM, **:P<0.01, ***:P<0.001(Dunnettの検定)

結果③

 殺菌成分・抗炎症成分を配合したふきとり化粧水を含ませたコットンによるふきとりケアを4週間継続することで、角層水分量、水分蒸散量※3、赤みスコア、かさつきスコアなど、肌状態に関する指標が有意に改善していました(図11)。


図11.ふきとりケア継続後の肌状態の変化
試験方法:医師の診断により、ニキビ症状および肌あれ症状を有する20~49歳の健常な日本人女性11名を被験者とし、4週間、朝晩2回、洗顔後に殺菌成分・抗炎症成分を配合したふきとり化粧水を含ませた化粧用コットンによるふきとりケアを実施した。使用前、2週間後、4週間後に、角質水分量および水分蒸散量*3の測定、医師による赤みスコア、かさつきスコアの判定を行った。赤み・かさつきスコアは、0:症状が見られない、1:わずかに症状がみられる、2:少し症状がみられる、と定義した。平均値±SEM, *:P<0.05, **:P<0.01, ***:P<0.001(水分量・水分蒸散量:Dunnettの検定, 赤み・かさつきスコア:Wilcoxonの符号付き順位検定(Bonferroniの不等式で多重比較))

考察

 ふきとり化粧水を含ませたコットンで肌をふきとる「ふきとりケア」によって、ニキビの予防・改善が見込めることが分かりました。ふきとりケアによって、ニキビ・肌あれの原因となる皮膚常在菌・角質・皮脂汚れを物理的に除去するとともに、ふきとり化粧水に含まれる抗炎症成分が肌の炎症を抑えることで、肌質の改善効果を発揮していると考えられます。

発表先

1)日本薬学会第139年会:ポスター発表
2)第31回 国際化粧品技術者会連盟本大会 2020(IFSCC Yokohama Congress 2020):口頭発表
3)本防菌防黴学会第49回年次大会:口頭発表

6. まとめ

 肌に悪そうというイメージがあるふきとりですが、実はその逆で、殺菌剤配合の化粧水を含浸させたコットンで毎日ふきとることでニキビが改善されることはもちろんのこと、肌状態も改善されていくことがわかりました。
 ただし、ふきとり方も重要で、むやみやたらに化粧水を含浸させたコットンでゴシゴシ擦るのではなく、化粧水でたっぷりとヒタヒタにしたコットンで優しくふきとるのがポイントとなります。
 日々の洗顔だけでは、ニキビの原因菌であるアクネ菌をすべて取り除くことはできません。ふきとりケアを組み合わせることで、より効果的にアクネ菌を取り除き、ニキビの予防ならびに改善効果が期待できます。

*1) ヘルシンキ宣言:1964年に世界医師会(World Medical Association : WMA)で採択された、ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則のこと
*2) 重層剥離率:角層をテープではがした際に、角層細胞が重なってはがれること。重なりが少ない方がバリア機能の整った良い肌状態と考えられる。
*3) 水分蒸散量:角層を通じて体内から揮散する水分量のこと。低い方がお肌のバリア機能が整った良い肌状態と考えられる。