シミ研究

男性のシミ
実態調査

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の効果を保証するものではありません。本研究成果は限られた条件での成果です。

1. 研究ダイジェスト

  • 男性は40代から大きなシミが発生し、そのシミは女性より濃くて目立つことを発見しました。
  • 男性のシミは女性のシミよりも根深くて、メラノソームの蓄積量が多いことを明らかにしました。
  • 濃い男性シミの内部は、複雑に入り組んだ構造になっていることを見出しました。

(図1参照)

図1:肌内部構造のイメージ図

2. 研究の背景

 日光性黒子・老人性色素斑(いわゆる”シミ”)は加齢や日々の生活習慣によって生じる肌症状であり、多くの人々が悩みがちな肌症状のひとつです。その原因や対処法について多くの研究が行われていますが、男性のシミに着目した研究は少なく、その実態は十分に解明されていません。
 私たちは男性のシミができる原因に応じた適切なシミ対策を提案するため、男性と女性のシミの違いを明らかにしようと考えました。そこで、男女それぞれのシミの濃さや目立ちやすさ、シミ部の肌の構造を調べました。

3. 男性のシミは大きく、女性のシミよりも濃いことを発見

概要

 男女のシミの違いを理解するため、老人性色素斑と判定された男女の顔写真や皮膚色データをもとに解析を行い、それぞれのシミの濃さや大きさの特徴を調査しました。

結果

 老人性色素斑と判定された男女のシミの濃さを比較したところ、男性のシミは女性よりも濃いことが明らかになりました(図2)。 年代ごとに分けてシミの濃さを比較した場合、女性は加齢に伴うシミの濃さに変化はありませんでしたが、男性のシミは加齢に伴い、徐々に濃くなる傾向にあり、さらに、40代・50代の同年代の女性よりも濃いことを発見しました(図3)。

図2:男女の老人性色素斑(シミ)の濃さと実際の症例
図3:男性と女性のシミの濃さの年代ごとの比較
試験方法)老人性色素斑を有する日本人男性43名、日本人女性69名の顔写真を画像撮影装置VISIAにて撮影した。左右の頬画像から抽出した長径6 mm(実測値:直径1cm)以上のシミをシミ部位、直径12mm(実測値:直径2cm)以上のシミは目立つシミと定義した。肌の明るさ(L値)は、ImageJにて画像上のRGB値を計測したのち、XYZ値(赤・緑・青の3原色を定量的に示した指標)に変換して算出した。非シミ部位のL値はシミ部位の周囲4カ所の平均値を用いた。シミ部位と周囲の非シミ部位のL値の差(⊿L値)を求め、シミの濃さとした。平均値±SEM、paired t-test *p<0.05, **p<0.01

 さらに、シミの大きさについても解析しました。直径2cm以上のものを目立つシミと定義し、割合を算出したところ、図4に示すとおり、男性は40代を境に、急に目立つシミが出現していく傾向にあることが分かりました。

図4:男性と女性の目立つシミの年代変化
試験方法)老人性色素斑を有する日本人男性43名、日本人女性69名の顔写真を画像撮影装置VISIAにて撮影した。左右の頬画像から抽出した長径6 mm(実測値:直径1cm)以上のシミをシミ部位、直径12mm(実測値:直径2cm)以上のシミは目立つシミと定義した。

考察

 男性のシミは女性のシミよりも濃いだけでなく、10年程度も早く大きなシミが出現することを発見しました。男性は女性と比べて、スキンケアをしない人が多いことや、日焼け止めを使用しないこと、髭剃りなどの摩擦ダメージを日常的に受けていることによって、シミを発症しやすく、悪化しがちになると考えられます。日々のスキンケアを欠かさず行うだけでなく、症状に応じた早めのシミ対策が必要です。

発表先

1)Yamamura et al., Enlarged rete pegs with excessive accumulation of melanosomes leading to darker aging spots revealed by histomorphological measurements of internal structures of the epidermis. International Journal of Cosmetic Science. Volume45, Issue3, June 2023, Pages 387-399 :査読付き論文
2)IFSCC Munich Congress 2018:ポスター発表

4. 男性の濃いシミ部位は、メラノソームをため込みやすい構造であることを発見

概要

 先ほどご紹介した研究で明らかとなった男性のシミの濃さは、男性特有の生活習慣や過剰な日焼け、老化に伴う皮膚構造の乱れによるものではないかと考え、シミの内部構造に着目した研究を行いました。

肌の内部構造とシミの原因物質メラノソーム

 肌は体表側から、表皮、真皮、皮下組織という3層からなります。中でも、細胞がレンガ状に積み重なったような構造からなる表皮は、体の水分を保持したり、紫外線などの外的刺激などから身を守ったりするために重要な役割を果たしています。
 表皮の最下層には表皮細胞が横一列に並んだ細胞の層(基底層)があり、表皮突起と呼ばれる、真皮側に波打ったような構造をなしています(図5:左)。表皮突起部分の断面を特殊な顕微鏡で観察すると、表皮突起を構成している基底層が、ドーナッツのような形状で並んでいるように見えます(図5:右)。
 また、表皮にはメラノソームと呼ばれる黒色の物質が含まれています。本来は、紫外線から肌を保護するために作られる物質で、肌のターンオーバーに伴い、垢となって排出されますが、紫外線ダメージが蓄積したり、歳を重ねたりすることで、過剰に作られ、肌に溜まることでシミになると考えられています。

図5:肌内部の水平断面と垂直断面(イメージ)

結果

 濃いシミ部位と薄いシミ部位の内部を共焦点レーザー顕微鏡で観察しました。その結果、男性の濃いシミ部位では表皮が複雑に入り組んだ形へと変形していることが分かりました(図6)。一方で、女性の濃いシミや薄いシミ部位ではそのような変形は見られませんでした。

図6:男性と女性の濃いシミならびに薄いシミの代表的な写真とその内部構造
試験方法)老人性色素斑を有する日本人男性6名、日本人女性7名のシミ内部を共焦点レーザー顕微鏡(VivaScope1500)にて観察した。ImageJにて顔画像撮影装置VISIAにて取得した画像上のRGB値を計測したのち、XYZ値(赤・緑・青の3原色を定量的に示した指標)に変換して肌の明るさ(L値)を算出した。⊿L値が11以上を濃いシミ、7以下を薄いシミと定義し、男女の濃いシミ・薄いシミの内部構造を比較した。

 皮膚の表面から内部に向かってどのように変形しているかを確認するため、シミ内部の画像を合成して3次元構築画像を作成しました。図7に示すように、女性のシミ部位では、表皮突起と呼ばれる構造が個々に独立しており、正常な構造を保っているのに対して、男性の濃いシミ部では、真皮側に奥深く伸びるとともに、表皮突起が複雑に入り組み、複数の突起が一つにまとまったような構造になっていることが判明しました。

図7:男性と女性の表皮突起の違い(表皮突起の立体画像:左・水平断面画像:右)
試験方法)それぞれのシミ部位の皮膚表面から表皮の先端までを1.52 m間隔で撮影した画像をimageJにて合成し、構築した。

 最後に、シミ内部の画像ならびに3次元構築画像を用いて基底層に含まれている、シミの原因物質であるメラノソームの量を算出しました。その結果、男性の濃いシミ部位では、周囲の非シミ部位の8倍程度、他のシミ部位に比べても4倍程度のメラノソームが蓄積していました(図8)。

図8:シミ部位ならびに周囲の非シミ部位の基底層に含まれるメラノソーム量
試験方法)共焦点レーザー顕微鏡(VivaScope1500)で取得した肌内部の画像データをもとに、imageJにて算出した。

考察

 男性の濃いシミの内部では、表皮が奥深くまで伸びており、構造が乱れていることを発見しました。シミの根のような構造には、複雑に乱れた肌内部にメラノソームが過剰に蓄積しています。過度な日焼けや日々の炎症ダメージの蓄積によって、表皮細胞の異常な増殖、メラニンの過剰な生成、表皮と真皮などの構造の乱れが引き起こされた結果、このような異常な肌内部状態になっていると考えられます。

発表先

1)Yamamura et al., Enlarged rete pegs with excessive accumulation of melanosomes leading to darker aging spots revealed by histomorphological measurements of internal structures of the epidermis. International Journal of Cosmetic Science. Volume45, Issue3, June 2023, Pages 387-399 :査読付き論文
2)第26回国際化粧品技術者会連盟中間大会 2021(IFSCC Mexico Conference 2021):ポスター発表

5. まとめ

 男性のシミは同年代の女性よりも濃いこと、そして、40代から大きくなり、目立ちやすくなることを発見しました。 内部構造を観察したところ、濃いシミの肌の内部は複雑に入り組んだ構造になっていたことから、本来、肌のターンオーバーとともに垢となって排出されるはずのメラノソームが溜まってしまうことで、濃いシミの一因になっていると考えられます。
 男性のシミを防ぐためには、20代~30代のうちから早めのシミ対策を行い、紫外線による炎症ダメージの蓄積やメラニンの生成を抑えることが重要です。シミ対策成分を含んだ化粧水・乳液・クリーム等のスキンケア製品でお肌をととのえ、適切なターンオーバーを促しましょう。