シミ研究

シミの元を分解する
機能成分

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の効果を保証するものではありません。本研究成果は限られた条件での成果です。

1. 研究ダイジェスト

  • シミ抑制効果を有するホオノキ抽出液、プルーン酵素分解物の作用メカニズムを探索しました。
  • ビタミンC誘導体(L-アスコルビン酸 2-グルコシド)、ホオノキ抽出液、プルーン酵素分解物の3成分を組み合わせることで、細胞内の消化力(リソソーム活性)を高め、シミの原因物質である過剰なメラノソームの分解を促して、シミのリスクを低減させる可能性を示しました。

(図1参照)

図1:リソソームによるメラノソームの分解(イメージ)

2. 研究の背景

 加齢に伴って出てくる老人性色素斑(いわゆる“シミ”)は40代以上の多くの方が気にしている肌悩みの一つです。しかしながら、横顔などにシミができている場合は、それが顕在化していても気づきにくく、友人や知人に指摘されることではじめてシミの存在を知るということもあります。
 弊社が以前行った調査では、シミを気にしており、複数個あるにもかかわらず、実際に顔に存在しているシミの半分程度しか自己認識できていないという事実が判明しました(図2)。気づかず放置してしまった場合、シミの元となる大きなメラノソームがどんどん蓄積し、シミが大きく濃くなってしまいますし、スキンケア製品などで対処しても、効き目を感じにくくなってしまいます。

図2:実際のシミの個数と、自己認識している個数
試験方法:顔にシミのある女性46名を専用の画像解析装置にて撮影するとともに、被験者自身に専用紙に自身の顔にあるシミ(実寸大、実際の位置)を記入してもらった。撮影した顔画像から求めた全シミ数と被験者自身が記入した認識しているシミ数を照らし合わせ、正答率を算出。なお、対象は長経6㎜以上とした。

老人性色素斑(シミ)が大きくなる仕組み

 シミの原因物質である「メラノソーム」とは色素細胞(メラノサイト)で作られた黒色の物質「メラニン」が入った袋状の細胞小器官です(図3)。本来は紫外線から肌を守るために作られる物質で、通常はターンオーバーに伴い、垢となって排出されますが、紫外線ダメージが蓄積したり、歳を重ねたりすることで、過剰に作られるようになります。大きな塊となって肌に溜まることでシミになると考えられています。

図3:シミの原因物質メラニンとメラノソーム

     

 実際、加齢に伴って顕在化する老人性色素斑(シミ)の部位では、表皮細胞内に複数のメラノソームからなる塊が蓄積し、肌にとどまり続けることで濃く大きなシミが形成されるということが報告されています(引用文献1)。また、老人性色素斑部位では健常部位の倍以上の大きさのメラノソームが蓄積していることが知られています(図4、引用文献2)。大きなメラノソームの塊は目立つシミの一因だと考えられますので、メラノソームを適切な大きさに保つとともに、不要となったものを分解・排出させていくことがシミ予防において重要です。

図4:シミ部

 不要になったメラノソームの分解には、リソソーム(消化酵素がたくさん含まれている袋状の細胞小器官)が関与していると考えられています。近年の研究によると、皮膚色が明るい皮膚由来の表皮細胞の方が、暗い皮膚由来の細胞よりも消化酵素(リソソーム)の活性が高いことやメラノソームの消化が盛んに行われていることが明らかになっています(図5、引用文献3・4)。つまり、できてしまったシミでも、細胞内のリソソームの活性を高めることでメラノソームの分解を促し、徐々に薄くすることが可能であると考えられます。そこで、表皮細胞がもつリソソーム活性に着目し、その活性を高めるための研究と素材の開発を行いました。

図5:リソソームによるメラノソームの分解(イメージ)

3. ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の3成分は細胞内の消化力(リソソーム活性)を高めることを発見

概要

 弊社の先行研究において、ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の3成分の組み合わせには、メラニン生成を抑える効果があることが明らかとなっております。そこでそれら3成分が細胞の消化力を高め、メラノソームの分解や排出を促す作用を有しているかを検証しました。

結果

 各成分を表皮細胞に添加し、細胞内の消化力の指標であるリソソーム活性の変化を可視化したところ、3成分を組み合わせることでコントロールと比べて細胞内の消化力(リソソーム活性)が高まっていることが分かりました(図6)。

図6:細胞内リソソーム活性の評価
試験方法:メラノソームを取り込ませた表皮細胞に、ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物を添加し、3日間培養した。その後、細胞を固定し、50nM LysoTracker DND-99 (Thermo Fisher Scientific, USA)で染色し、共焦点顕微鏡(FV3000, オリンパス)にて撮影した。

考察

 ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の3成分の組み合わせは細胞内の消化力(リソソーム活性)を高めることが確かめられました。リソソーム活性が高まることで、シミの原因物質であるメラノソームなどの不要となった物質の分解や排出を促している可能性が示唆されました。

発表先

1)第25回国際化粧品技術者会連盟中間大会 2019 (IFSCC Milan Conference 2019):ポスター発表

4. 機能成分による細胞内のメラノソーム分解を可視化

概要

 上記の検討により、ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の3成分を組み合わせて表皮細胞に添加することで、リソソームの活性が高まることが確認できました。そこで、リソソームの活性との関係性が報告されているメラノソームの分解に着目し、3成分によってメラノソームの分解が促されるかを検証しました。

結果

 3次元表皮モデルに各成分を添加・培養した後、透過型電子顕微鏡にてメラノソームの様子を観察しました。その結果、ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の3成分を組み合わせることで、表皮細胞に含まれているメラノソームの分解が促される様子が可視化できました(図7)。

図7:3次元表皮モデルを用いたメラノソーム分解の評価
試験方法:3次元表皮モデル(MEL-300A, 倉敷紡績株式会社)に対して、UVB照射(30mJ/cm2)およびビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の添加を1日おきに行い、10日間培養した。その後、薄層切片を作製し、透過型電子顕微鏡(JEM-1400Plus, 日本電子株式会社)にて観察した。

発表先

1)第25回国際化粧品技術者会連盟中間大会 2019 (IFSCC Milan Conference 2019):ポスター発表

5. まとめ

 ビタミンC誘導体・ホオノキ抽出液・プルーン酵素分解物の3成分を組み合わせることで、細胞内の消化力(リソソーム活性)を高め、メラノソームの分解を促すことが分かりました。この成果は、老人性色素斑(シミ)部位に溜まりやすいメラノソームを分解・排出を促すという新たな対処法を提供するとともに、できてしまったシミに対しても有効であるという新たな可能性を示唆しています。

引用文献
  1. Nobless et al., Skin Pharmacol Appl Skin Physiol, 2006; 19, 95-100
  2. K.Maeda, Cosmetics, 2017; 4, 4, 49

  3. Chen et al., J Invest Dermatol., 2006; 126, 10, 2345-2347

  4. Ebanks et al., J Invest Dermatol. 2011 June; 131, 6, 1226-1233